Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
消化管や尿路・性器への感染がRA発症リスク低下と関連 です。
感染症の既往が関節リウマチ(RA)の素因という仮説は古くから提唱されているが、明白な関連が示されているのは歯周病菌(Porphyromonas gingivalis)感染のみである。
スウェーデンのMaria E. C. Sandberg氏らは、過去2年間の胃腸炎・尿路感染症,性器感染症の既往に関して、逆にRAリスク低下との関連が認められたと報告した。
今回の研究では過去2年間の胃腸炎・尿路感染症・性器感染症・前立腺炎・肺炎の既往と、副鼻腔炎または扁桃腺炎による抗菌薬治療について質問票による調査を行った。
RAの予後不良因子の1つに抗CCP抗体があるが、過去2年以内の胃腸炎・尿路感染症・性器感染症とRA発症リスク低下との関連は同抗体陽性で陰性のものと比べて強かった。
今回の研究は観察研究であり、因果関係について結論を導くことはできないが、「腸内細菌がRA発症に影響を与える可能性について今回の知見は特に興味深い」としている。
機序としては腸の内膜が高負荷の細菌抗原に曝露されることにより、炎症の惹起や炎症の修飾が起こり、RA発症リスクに影響を与える可能性が考えられる。
今回の研究でRAリスク低下との関連が認められた感染症発現部位は、主にグラム陰性菌による感染症が起こる部位である。
同氏らは「グラム陰性菌に対する抗菌薬がRAに対して有効であることがランダム化比較試験で報告されていることも、こうした機序仮説を支持している」と述べている。
この論文には驚きました。本論文中にもあるように、歯周病と関節リウマチの関係は有名です。
Sandberg氏もこのことを念頭に研究を行ったのでしょうが、結果は間逆だったのです。
しかし、考えてみれば関節リウマチは自己免疫疾患です。花粉症などのアレルギー疾患では感染症への暴露の少なさが、発症に関連すると言われています。
少し乱暴な考え方ですが、両者とも免疫系の異常反応が原因なので、感染症に暴露されることで免疫系が正常な働きを維持でき、関節リウマチを発症しにくくなるとしてもおかしくありません。
このような考え方をするのなら、現代日本のようにあまりにも清潔過ぎる環境は、人間にとってむしろ害を与えるのかもしれませんね。
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