日整会広報室ニュースをパラパラ見ていた時に医事紛争の連載に目が留まりました。
今回は、手術の左右間違いに関する話題でした。
事故自体は平成2年に発生した関節リウマチの指間違いでした。本来なら環指の手術をする予定だったのですが、誤って中指の手術を施行したようです。
連鎖記事の最後に、四肢の手術では患部のマーキングを絶対にするべきと締めくくられていました。私もまさにその通りだと思います。
最近では各医療機関での医療安全に対する意識が高まり、手術部位のマーキングは安全管理上の常識となっています。
脊椎に関しては、マーキングの効果は微妙ですが、少なくとも四肢に関してはマーキングが事故防止の大きな力になると思います。
フムフムと思いながら読了しましたが、ふと今回の症例は手指の間違いであることに気付きました。左右間違いではなく、手指の間違いなのです。。。
う~ん、これはマーキングが少し難しいかもしれません。もちろん、物理的には問題なくマーキングできるのですが、派手に描くと手術の妨げになりかねません。
もちろん、左右間違い以上に手指の間違いは発生しやすいのでマーキングは必須ですが、小さめに描く等の工夫が必要かもしれませんね。いやはや、難しい・・・
手指
先日、環指の屈筋腱損傷の手術がありました。
環指の尺側側面に達する創があったので、小指が邪魔でした。
通常、患指以外はアルミの手を使用して伸展位で固定するのですが、環指尺側の創だったので、小指伸展ではどうしても邪魔になります。
最初は助手が小指を屈曲させていたのですが、手が足りなくなってきました。その時に看護師さんが、邪魔な小指をシーツ固定用テープで屈曲位に固定するというアイデアを出しました。
上図が術中の画像なのですが、意外に使えました! 小指がシーツ固定用テープで屈曲位に固定されていることが分かります。
手指を伸展するときにはアルミの手を重宝しますが、手指を屈曲する際にはシーツ固定用テープもなかなか手軽で良いと思います。
広島大学名誉教授の津下先生による、手の外科における必須の医学書です。特に、「私の手の外科」は津下先生直筆のイラストが豊富で、非常に分かりやすく実践的な医学書です。
私は細かい作業をするときに、少しですが手先が震えます。
子供の頃からなので、おそらくアルコール中毒というわけではないと思います(笑)。
医師としての業務を行う上で、手先の震えが強いとさまざまな支障があります。例えば関節腔内注射の消毒の際に、イソジン綿球が小さいと清潔鑷子に当たってしまいそうになります(※)。
※ 最近ではディスポの消毒セットを使用するケースが多いですが、収益性の高い医療機関ほど小さな綿球を使用する傾向にあると思います。
私の場合は仕事の支障になるほどの手先の震えではないのですが、見た目がカッコ悪いので何とかならないものかと思案したところ妙案を思いつきました。
その方法とは、もう片一方の手を添えて鑷子を使用するという工夫です。私は右利きなのですが、左手を鑷子の下に添えるだけで、ピタッと手先の震えが止まります。
見た目にも両手を使っているので丁寧に行っていると思われるメリットもあります。これを応用してヒアルロン酸製剤を関節腔内注射する際にも両手で行うようになりました。
23G針を使用しているので片手だと結構大変ですが、両手で注射すると苦も無く注入することができます。手先の震えで困っている方や関節注射を楽に施行したい方にはお勧めの工夫です。
★★★ 管理人 お勧めの医学書 ★★★
初学者が整形外科の外来や救急業務を遂行するにあたり、最もお勧めの書籍です
整形外科研修ノート (研修ノートシリーズ)
整形外科外来をしていると、手指の軟部腫瘍を診る機会が非常に多いと思います。患者さんからは腫瘍であることを告げると「ガンじゃないですよね?」と訊かれることが多いです。
ガングリオンであれば間違いなく悪性ではありませんが、それ以外では診断が難しいのが現状です。MRIを施行しても小さすぎて情報量が少ないです。
最終的には組織生検をしなければ責任のある回答を提示できないのですが、そもそも手指に悪性軟部腫瘍ができたという話を聞いたことがありません。
そこでやんわりと、おそらく良性ですがもしどんどんサイズが大きくなってくるようなら再診してくださいと伝えています。
大学の腫瘍班のドクターにお伺いすると、やはり手指の軟部腫瘍で悪性腫瘍は診たことが無いという話でした。何故手指に悪性腫瘍が発生しないのかは分かりませんが、専門医に言われると説得力があります。
ただ、私が文献の渉猟をしきれていないだけなのかもしれませんので、もし手指の悪性軟部腫瘍の症例報告の文献があれば是非教えて欲しいです。
★★ 管理人お勧めの医学書 ★★
ガイドラインに準拠してわかりやすくコンパクトにまとまった良書です。概論が最初の30ページ程度なので、これはあらかじめ通読するとよいでしょう。各論は原発性骨腫瘍、腫瘍類似疾患、転移性骨腫瘍、軟部腫瘍、骨系統疾患、代謝性骨疾患の6章に分かれています。各章とも疾患ごとに、豊富な写真でわかりやすく解説されています。
骨・軟部腫瘍および骨系統・代謝性疾患 (整形外科専門医になるための診療スタンダード 4)
今日の午前は人工膝関節全置換術(TKA)、午後は腱鞘切開術でした。
TKAはあまり気付きが無かったので、腱鞘切開術について記載します。
最近、狭窄性屈筋腱炎に対する腱鞘切開術では、局所麻酔剤でエピネフリン入りキシロカインを使用しています。ターニケットは用いていません。
もともと、透析患者さんのシャント側で、ターニケット無しで手術を行っていました。
しかし、皮下で僅かに出血するだけなので、今では全例ターニケット無しで手術を行っています。
私が研修医の頃は、手指の手術でエピネフリン入りキシロカインを使用するのは禁忌と言われていました。しかし、手指の手術でもエピネフリン入りキシロカインを使用しても問題無いという海外の論文がでてからは気兼ねなく使用しています。
尚、腱鞘切開術ではエピネフリン入りでなくても出血はあまりしないです。ただ、手根管開放術の際には、エピネフリン入りキシロカインを使用する方が無難でしょう。
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