Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
術中・直後の下肢運動+マッサージでTHA後のVTEが激減 です。




実地臨床における深刻な課題となっている人工股関節置換術(THA)後の静脈血栓塞栓症(VTE)の発生予防に,手術中・直後の徒手的下腿マッサージと足関節他動運動の実践が著明な効果を示す成績が報告された。


済生会横浜市東部病院運動器センター整形外科副部長の船山敦氏が,第40回日本外科系連合学会学術集会で明らかにしたもので,同施設ではこの手法の導入により,THA後VTEを1.0%未満に減少させることに成功している。


同施設ではVTE予防対策として,2006年までの179例(前期群)については術後の弾性ストッキングと間欠的空気圧迫法(IPC)を使用し,2007〜10年の506例(中期群)では術中から患肢に弾性包帯着用,健側にはIPCとしたことで,VTE陽性率は前期の36.9%から中期には15.6%へと半減を実現した。  


手技の改善による手術時間の短縮(前期平均140分→中期平均104分)の他,弾性ストッキングやIPCによる手術管理が血流うっ滞や血管内皮損傷を防ぎ,成績向上に寄与したと考えられた。  


2011年に新たなVTE予防対策を導入した。手術中に30分間隔で50回,手術直後には「6秒施行/4秒休息」を5セットの徒手的下腿マッサージ(intermittent calf massage;ICaM法)と足関節他動運動(intermittent passive ankle motion;IPAM法)を行う方法だという。  


その結果,ICaM法・IPAM法導入から2014年8月までの307例(後期群)のVTE陽性率は0.98%(3例)と,前・中期の成績に比べて劇的な改善が認められた。


手術中・直後の下腿マッサージや足関節他動運動を行うことで,
① 術中の静脈血流量が増え
② うっ滞を減らし血管内皮損傷を防ぎ
③ 下腿静脈・ヒラメ筋内静脈の血栓形成を抑制する

と考えられるとした。


船山氏は「非常に簡便で,しかも医療費がかからない方法でありながら,VTE陽性率は激減できた。ぜひ他施設でも施行してほしい」と会場の外科医に実践を勧めた。






手術中に30分間隔で50回、手術直後には「6秒施行/4秒休息」を5セットの徒手的下腿マッサージと足関節他動運動を行うという簡便な方法でVTEの併発率を低減したという報告です。


本当にこんな簡単な方法で、VTEの併発率をほぼゼロにすることができるのか? と疑念をいだきそうな報告です。


しかし、福岡整形外科病院の王寺先生が、VTEはTKAの術後24時間以内に併発すると報告されていることから考えると、術中~術直後がVTE併発の最も危険な時間帯だと考えられます。


このため、私は船山先生の報告は非常に価値があり、この方法は予防効果が高いと期待しています。今週もTHAがあるので早速実践したいと思います。目指せ!VTE併発”ゼロ”ですね。



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