昨日の午後は尺骨肘頭骨折に対する関節内骨折観血的手術でした。
骨接合は鋼線締結法で行いました。
整形外科医にとって尺骨肘頭骨折は非常にポピュラーな骨折なので、粉砕が高度な場合を除いて術中に苦労する場面は少ないと思います。しかし、昨日の方は違いました。
受傷前から肘関節の伸展制限(屈曲拘縮)があったため、肘関節を-30度ぐらいまでしか伸展できなかったのです。どうも肘関節自体が高度に拘縮している可能性があります。
おまけに受傷から2週間近く経過していたため整復に難渋しました。整形外科常勤医が居ない病院からの転院患者さんで、術中所見から考えると受傷時期自体が怪しいものです。
いくら肘頭に停止する上腕三頭筋を剥離しても、骨折部の間隙が2cm程度あります。やむを得ず、アキレス腱延長の際に施行するZ延長術に準じた方法で上腕三頭筋を延長しました。
これで何とか肘頭骨片を整復することが可能となりましたが、尺骨肘頭骨折の手術に際して骨片間の間隙で苦労したことは初めての経験です。
後から考えると、手術せずにそのまま経過観察(=手術適応無し)が妥当だったのかもしれません。今後は肘関節拘縮が高度な症例では、手術適応を慎重に見極めたいと思います。
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AO法骨折治療
手術適応
今日も日本整形外科学会にきています。
山口大学の田口敏彦教授の講演を拝聴しました。
個人的に参考になった点を列記します。
- 脊髄症の自然経過において、すべての症例で悪化するわけではないが、改善することは無い
- 頚椎手術で手術適応となるのはJOAスコアで11点未満であることが多い
- 階段を降りるときの不安感が出現すれば手術を検討するべき( 痙性麻痺のため昇りは不安感なし)
- 頚椎手術では合併症の併発のため約1.7%の症例で術前よりも症状が悪化する
- 胸郭出口症候群では頚椎牽引で症状が悪化する
- Keegan型の頚椎症では、筋電図検査で健側比の50%以上の電位があれば保存治療可能であることが多い。具体的には頭蓋の運動野もしくは腕神経叢(Erb点)を刺激して得られた複合筋活動電位(CMAP)の反応を評価する。たとえば、頸椎症性筋萎縮症の近位型で、上腕の三角筋および二頭筋における患側の振幅の大きさが健側に比べて50%以上の場合、保存治療適応の指標としている。
- 通常の診療では障害高位を診断するためにdermatomeをみるが、myotomeやskeletomeでも症状を説明できることがあるので注意する(たとえば頚髄症での胸をしめつけられるという主訴)
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