今日の午前は外来でした。交通事故で受傷した脛骨膠原骨折に対して関節内骨折観血的手術を行った患者さんが来院されました。
この方は膝関節内側の痛みを訴えるので、抜釘時に関節鏡も施行しています。術中所見では膝関節内側に軟骨欠損をみとめ、典型的な変形性膝関節症の所見でした。
変形性膝関節症に至った原因は定かではありません。しかしご本人がおっしゃられるには、膝関節痛は事故後に発症したとのことでした。
抜釘時に鏡視下滑膜切除も施行していますが、痛みは変わらないとのことでした。こうなってくると損害保険での治療が難しくなってきます。保険を全く考慮しないと関節腔内注射の施行となります。
しかし、一般的なヒアルロン酸製剤の関節腔内注射の適応は加齢による変形性膝関節症であり、交通事故絡みでは損害保険会社が認めないと思っていました。
外来でその旨を説明したところ、患者さんが損害保険会社に確認しました。するとヒアルロン酸製剤の関節腔内注射も事故による外傷性膝関節症として治療費の支払いを認めるとのことでした。
本当かなと思って当方も損害保険会社に確認したところ、治療費の支払いを認めるという回答でした。今まで交通事故でヒアルロン酸製剤はご法度だと思っていましたが、その固定観念が破られてしまいました。
整形外科医にとっては、患者さんと損害保険会社の争いに巻き込まれる序章になりそうなので、あまりいい話ではありません。しかし、交通事故の被害者にとっては朗報なのでしょうか???
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損害保険
今日の午前は出張先での外来でした。
2週連続の連休明けの外来だったので、殺人的に混みあっている外来でした・・・。
連休があると交通事故も増えます。2週間前に受傷された方が、3日前から後頚部から右肩にかけての痛みを主訴に再診されました。診察の結果、加齢による頚椎症性神経根症でした。
原因が加齢なので、基本的には損害保険会社は支払いを拒否します。発症の時期が微妙なのが紛らわしい原因なのですが、本日に関しては交通事故扱いで処理することにしました。
その処理の仕方は、”外傷性頚部症候群疑い”で精査した結果、原因は頚椎の加齢による変化であったという論法です。これなら損害保険会社としても反論できないと思いますし、考え方としても筋が通っていると思います。
患者さんの立場からも被害者という意識があるため、診断の段階で健康保険扱いにするとかなり不満が残ってしまいます。そこで折衷案として、”外傷性頚部症候群疑い”で精査するのです。
注意点は”外傷性頚部症候群疑い”の病名は即日”中止”にしておくことです。そして患者さんに本日は診断の段階なので損害保険会社の費用だが、症状の原因は加齢なので今後の治療は自分の健康保険を使用することになると説明しておきます。
このような配慮を行うことで、要らぬトラブルを未然に防ぐことが可能になります。整形外科医にとって、交通事故や労災事故はできれば関わりたくない案件ですが完全に回避することは不可能です。
したがって、未然にトラブルの種をひとつひとつ潰しておくことが、お互いが不幸にならないための重要なポイントかなと思っています。
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