踵骨骨折の治療が難しい理由
先日、踵骨骨折の手術が 2件連続でありました。どちらも joint depression typeなので、Westheus法は不可でした。
踵骨骨折は人体の骨折の中でも、かなり治療が難しい部類です。その理由は、複雑な形状なので解剖学的整復が難しいことと、至る所に疼痛を惹起するポイントがあるためです。
joint depression typeでは、一般的に外側侵入でのプレート固定が行われます。この手術の欠点は、軟部組織の創治癒不全です。
従来の L字切開では、ほぼ全例と言って良いほど創治癒不全を併発します。特に L字のコーナー部分がなかなか創治癒せずに浸軟し続けます。
運が悪いと創が哆開してしまいます。こうなると高率に感染を併発するので無残な結果に...。整形外科的には胃の痛くなる状況ですね。
踵骨骨折のMIS
Zimmer Biomet社の骨折のプレートには、A.L.P.Sシリーズがあります。脛骨高原骨折のプレートが有名ですが、踵骨骨折用のプレートもあります。
MIS用のプレートがあるとのことなので、今回は踵骨用のA.L.P.Sプレートを使用しました。せっかくなので、皮膚切開は L字切開ではなく横切開です。
横切開でのMISは初めてだったのですが、従来の L字切開と比較して距踵関節の展開が良くありません。しかも踵骨体部を展開できないため骨折手術としては難しい印象でした。
ただし、距踵関節の整復さえクリアすると、軟部組織のトラブルは少なそうで安心感があります。距踵関節の転位の小さな症例には積極的に選択して良さそうです。
A.L.P.Sプレートでは足根洞にガイドワイヤーを刺入する
A.L.P.Sプレートの面白い点は、足根洞に徒手的にガイドワイヤーを刺入することで、プレートの高さを(自動的に)至適位置に設置できることです。
実際には仮固定用のK-wireを挿入するので、この手技を使えないこともあるようですが、コンセプトは面白いと思いました。
A.L.P.Sプレートでの MISの感想は、従来の L字切開と比較して術野は悪いものの、術後の軟部組織トラブルが少ないので安心感があるというものでした。
派手に転位した踵骨骨折では MISは難しいものの、転位の小さな症例を選べば、踵骨骨折の MISは悪くないと思いました。
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