昨日の夜診で、小指のmucous cystの方が受診されました。
日本語では粘液嚢腫と言うそうですが、日常診療では" mucous cyst "と呼ぶことが多いです。
mucous cystは手指や足趾のDIP関節由来の嚢腫です。ほとんどの症例で末期のヘバーデン結節を併発しており、関節症症状の一種と言っていいと思います。
DIP関節由来ではありますが、穿刺すると漿液性の関節液ではなくガングリオンのようなゼリー状の液体を吸引することが多いです。
ときどき、mucous cyst を”イボ”だと思って、膨れてきたら針で点いて内容物を出している患者さんが居るようですが、このようなことを繰り返している化膿性DIP関節炎になってしまいます。
さて、治療ですがmucous cystを切除しても高率に再発すると言われています。考えてみれば当たりまえで、原因であるDIP関節のOAはそのままで、皮膚表面だけ切除しても無駄なのです。
成績が悪いので各種の切除術が考案されていますが、最も確実なのはDIP関節固定術です。mucous cystの原因を無くすわけですから最も成功率が高いです。
しかし、現実問題としてmucous cystに対して手術を施行することはほとんど経験がありません。これは半年ほど穿刺を続けていると自然に発生しなくなる症例がほとんどだからです。
mucous cystは末期のヘバーデン結節に併発することが多いですが、OAが更に進んでDIP関節の可動域が小さくなると、mucous cystは自然に発生しなくなる印象です。
つまり、mucous cystはヘバーデン結節の臨床経過における、最後の残り香的な病態ではないか? と個人的には思っています。
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