日本リウマチ学会から送られてくる News Letter リウマチ No. 48 を拝読していると、リウマチ科を標榜して開業されている先生のコラムがありました。


平成29年4月から消費税が10%へ増税されるので、高価な生物学的製剤を多用するリウマチ科クリニックは経営が厳しくなるという趣旨でした。


「消費税増税って、医療機関が仕入れる医薬品にも掛かるのか!」 という超基本的なことを今更ながら知って驚きました。開業医の先生が聞けば、バカかこいつは? と思うことでしょう(笑)。


このことがきっかけで医薬品に掛かる消費税について調べてみると、高価な医薬品を多用する医療機関の危うさに気付きました。医薬品は下記のようなルートで医療機関へ流通します。



製薬会社 → 卸業者 → 医療機関



卸業者から医療機関へは薬価から割り引いた価格で納入されます。この割引価格を薬価差と言いますが、厚生労働省の試算では全国的な薬価差は平成23年度時点で8.4%だったようです。


8.4%もサヤを抜けるのなら、医療機関はとても美味しいじゃないか! と思うのは早計です。医療費は非課税なので、薬価差8.4%から消費税5%を支払うと残る差額は3.4%となります。


もし常に100%の医薬品を使用して在庫やデッドストックがゼロであれば、薬価差3.4%は医療機関の利益となりますが、実際にはそのようなことはあり得ません。


薬価差3.4%程度で、2年毎の薬価改定による1~5%の薬価引下げやデッドストックの差額を賄うのは非常にリスキーです。そしてこのリスクは薬価が高ければ高いほど顕著となります。


このため、高価な生物学的製剤を多用するリウマチクリニックは、経営的にはあまり好ましい状況ではないと言えます。大切なのは売上の大きさではなく手元に残る利益ですから・・・


私は素人的な考え方で、高価な生物学的製剤をバンバン使うリウマチクリニックはさぞ儲かるのだろうなと思っていましたが、とんだ勘違いだったようです。


経営上のリスクを犯してまで、高疾患活動性の関節リウマチ患者さんの治療にあたっているリウマチクリニックの先生方には頭が下がります。 




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