昨日の午前は母指狭窄性屈筋腱炎(ばね指)に対する腱鞘切開術を施行しました。私は腱鞘切開術に際してターニケット無しで局所麻酔剤にエピネフリン入りキシロカインを使用しています。
今まで特に問題は起こらなかったのですが、昨日の方は手術終了してもエピネフリンによる血管収縮作用が持続していました。母指基部から先端までが蒼白なのです。
パルスオキシメーターを母指に装着しましたが、全く脈波を拾うことができません。既に局所麻酔を施行してから30分程度経過していたので、さすがの私も少し焦りました。
使用したエピネフリン入りキシロカインは約3ccで掌側の術野周囲のみでした。しかし母指尖端から基部まで背側も含めて全体が蒼白です。そしてこの方はかなりのヘビースモーカーでした。
ここまで広範囲に末梢血管が収縮するのは初めての経験です。局麻後1時間してようやく指先の循環状態も改善してきました。今回のケースを受けて、大学の手の外科医に確認しました。
すると、そんなことはよくあるけど大丈夫!というコメントでした。そうなんですね・・・。ただ、その先生がおっしゃられるには、添付文書上は【禁忌】であることが問題とのことでした。
欧米の手の外科のガイドラインでは、エピネフリン入りキシロカインの使用を推奨しているそうです。しかし、日本ではアストラゼネカのDIにしっかりと禁忌と記されています。
日本手の外科学会がアストラゼネカ社にDIの記載の変更を要望していますが、未だに禁忌事項から削除されていないそうです。臨床現場の人間にとしては困った状態が続いています。
そのような学会と製薬会社の状況は抜きにして、今回の経験からヘビースモーカーのような重度の血管障害を予見できる方には使用しない方が無難だと思いました。
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