東京女子医大の男児事件に思う のつづきです
その病理医がおっしゃられるには、最近(ここ10年ほど)の風潮として臨床経過から予想されなかった突然死に関しては、基本的にまず警察に届け出る方が無難とのことです。
事件性の有る無しを判断するのは警察であって医師ではないという考え方がベースにあります。もちろん、医学的知識の無い警察がどこまで正確に判断できるのかは甚だ疑問です。
しかし、社会の風潮(?)がその方向に流れているので、医師としてはます警察に届け出て、事件性の判断を警察に仰ぐ方が無難とのことでした。
そして、警察が事件性有りと判断すれば司法解剖に、事件性が低いと判断すれば必要に応じて病理解剖を依頼するという流れが、現時点では最もリスクが低いそうです。
もちろん、これは病理医サイドの見解であり、医療訴訟に巻き込まれたくないという気持ちが透けて見えます。それでもこのあたりの流れは一般整形外科医も理解しておくべきでしょう。
勤務先(開業医なら自院)によって、地域で果たす役割・状況・患者層が大きく異なります。したがって突然死=異状死と捉えて、全例を警察に届出するのは現実的ではありません。
自分の勤務先に異状死の判断を任せられる医療事故委員会等があれば問題ないですが、基幹病院以外では常設の医療事故委員会等は機能していないことが殆どだと思います。
したがって、不幸にして突然死が発生した場合の異状死の判定基準や判定方法等を、その医療機関に応じて予めシュミレーションしておいて損はないと思いました。
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異状死
ご存知の方も多いと思いますが、2014年2月に東京女子医大病院で首のリンパ管腫を取り除く手術をした2歳の男児が急死した事件がマスコミ各社から報道されました。
現時点ではプロポフォールの過量投与が問題視されています。このあたりの事実関係を正確に把握することが困難なので論評は控えますが、ある弁護士のコメントが引っ掛かりました。
週間文春の記事によると、「異状死の24時間以内の届け出を義務づけた医師法に触れる可能性がある」と医療事故研究会を主宰する森谷和馬弁護士が指摘しているのです。
医療過誤の疑いがある場合は異状死とされます。医師法第21条にも、異状死は24時間以内に所轄警察署に届け出なければならないと規定されています。
整形外科医が遭遇するケースで最も考えやすいのは、入院患者さんの突然死だと思います。なにしろ大腿骨近位部骨折等のハイリスク患者さんを多数抱えており他人事ではありません。
現実問題として明らかに事件性や医療過誤の可能性が高いケースは稀で、大半は死因も分からず、そもそも異状死に該当するのかさえ判断に苦しむケースがほとんどではないでしょうか。
前々から何となく心の中にわだかまっていた事なのですが、大学の病理医と話をする機会があったので、思い切ってこのあたりの疑問点をお伺いしてみました。
突然死に対する病理医の見解 につづく
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