先日のことですが、人工股関節全置換術(THA)を施行しながら、ふと思いついたことがありました。それは、セメントレスカップの固定性に関することです。


欧米人と比較して、日本人は臼蓋形成不全股の割合が多いです。このため、充分な被覆を得ることが難しい症例を散見しますが、それでもカップが固定されるのはどうしてでしょう?


更に、カップをインパクションしても充分な固定性を得られないため、やむを得ずスクリューのみでの固定となる症例まであります。


このような症例でも、私は術直後から全荷重を許可していますが、カップが移動することは通常ありません。たった、3本のスクリューで、カップにかかるストレスを支えているのか?


ずっと疑問だったのですが、インプラントを整復した際に、中殿筋などの股関節周囲筋による股関節への「圧迫力」が、カップ―寛骨臼間に良い影響を与えていることに気付きました。


つまり、股関節周囲筋群が緊張するおかげで、カップ-寛骨臼間には常に圧迫力が加わっているのです。スクリューは、カップ-寛骨臼間の剪断力予防の意味合いが強いのでしょう。


こう考えると、セメントレスカップを設置する際の心理的ストレスが幾分軽減されました。ただし、正確にリーミングすることが大前提であることは言うまでもありません。




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