整形外科医のブログ

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胸痛

左肩痛や左腕痛にはご注意!

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Medical Tribune 2013年11月7日号に興味深い記事がありました。「急性冠症候群の症状に性差」です。以下、Medical Tribuneからの転載です。


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〔シカゴ〕ブリティッシュコロンビア大学(カナダ・バンクーバー)のNadia A. Khan助教授らは,55歳以下の急性冠症候群(ACS)患者を対象に症状の性差の有無を明らかにするため前向きコホート研究を実施し,「男女とも最も多く見られる症状は胸痛であったが,男性に比べて女性では胸痛を伴わない患者の割合が高かった」とする結果をJAMA Internal Medicine(2013; オンライン版)に発表した。


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胸痛はACSの代表的な症状で,この症状をきっかけにACSの診断検査が行われることが多い。しかし,診察時に胸痛がない患者の割合も35%に上る。胸痛のない患者では,胸痛がある患者と比べて救急診療部での誤診率が高く,死亡リスクも高い。  


また,高齢のACS患者では胸痛がない患者が少なくなく,特に女性で多いことが報告されている。しかし,ACS患者の約18%を占める55歳以下の比較的若い患者でも同様の傾向が認められるか否かについては,これまで不明であった。  


Khan助教授らは今回,ジェンダーおよび性の違いが心血管疾患にもたらす影響を明らかにするため,米国,カナダ,スイスで行われている前向き観察研究(2009年1月〜12年9月に登録された55歳以下のACSによる入院患者1,015例、年齢中央値49歳,女性30%)を対象に,急性期の症状の性差について検討した。


その結果,男性患者の96.6%,女性患者の97.0%が胸痛あるいは胸痛以外のなんらかの症状(息切れなど)を訴えた。男女ともに約80%が診察時に胸痛を訴えたが,男性に比べて女性では胸痛がない患者の割合が高かった(男性13.7%対女性19.0%)。  


また,胸痛がない女性では,胸痛がある女性と比べて全般的に症状の数(平均)が少なかった(3.5対5.8)。この傾向は男性でも認められた(2.2対4.7)。胸痛以外の症状としては,男女ともに脱力感,ほてり,息切れ,冷汗,左腕/左肩の疼痛などが多かったが,胸痛がない男女で比べると,女性の方が症状の数が多かった。  


Khan助教授らは「今回の研究から得られた重要な知見」として,55歳以下のACS患者でもACSのタイプにかかわらず,男女とも胸痛が最も頻度の高い症状であること,さらに女性では胸痛がない患者の割合が男性よりも高いことを挙げている。  


その上で,「患者が胸痛を訴えた場合にはACSの診断検査を行うべきである。また,高齢患者と同様,若年患者でもACSで最も多い症状は胸痛であるという事実を公衆衛生上のメッセージとして発信すべきである。


一方で,55歳以下の比較的若い女性患者では5人中1人は胸痛を訴えないことを考慮し,医療従事者は若い患者,特に女性の場合は胸痛を訴えなくてもACSの可能性があることを十分意識する必要がある」と指摘している。  


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整形外科医から見た上記論文のポイントは、「55歳以下の比較的若い女性患者では5人中1人は胸痛を訴えないことを考慮し,医療従事者は若い患者,特に女性の場合は胸痛を訴えなくてもACSの可能性があることを十分意識する必要がある」だと思います。


特に胸痛の無いACSの症状として、脱力感・ほてり・息切れ・冷汗・左腕や左肩の疼痛が挙げられています。左腕や左肩の疼痛で整形外科を初診する可能性もゼロでは無いので注意が必要だと思います。


個人的な経験ではACSの患者さんは独特の重篤感があるので、その雰囲気を察知する観察力が必要ではないかと思います。実際、左肩痛で初診したACS患者さんを整形外科医が帰宅させたことが訴訟になった例が数年前にあったようです。


我々整形外科医が普段の診療でACSの患者さんを診察する機会はあまり無いのですが、常にその存在を念頭に置いておく必要があるのかなと思いました。

 



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静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その4

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静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その3 のつづきです。 



PTE発生時の症状の症状は下記のごとくです。


呼吸困難,胸痛が主要症状であり,頻呼吸,頻脈も高頻度に認められます。

 

 

呼吸困難は最も高頻度に認められ、他に説明ができない突然の呼吸困難で危険因子がある場合には、急性肺血栓塞栓症を鑑別診断に挙げなくてはなりません。

 

 

失神も重要な症候で中枢肺動脈閉塞による重症例に出現します。急性血栓肺塞栓症は、失神の鑑別疾患として忘れてはなりません。



咳嗽・血痰も少なからず認められ、動悸・喘鳴・冷汗・不安感が認められることもあります。

 

 

特徴的発症状況としては安静解除直後の最初の歩行時、排便・排尿時、体位変換時があります。

 

 

ショックで発症することもあり、この場合には低血圧を認めることもあります。

肺高血圧症に基づく所見としては、右心不全を来たすと頸静脈の怒張を認めます。


私は過去に3回のPTEの経験がありますが、うち1名の方は安静解除直後の最初の歩行時でした。運悪く胸郭形成術後で片肺しかない方だったので、心肺蘇生に全く反応しませんでした。


静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その5 につづきます。






日本整形外科学会静脈血栓塞栓症予防ガイドライン


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