日本整形外科学会雑誌の第89巻を拝読していたところ、
興味深いJOS掲載原著論文要旨がありました。
東北大学の高橋 敦先生の「膝窩筋腱大腿骨付着部とTKA骨切り部の関係に関する解剖学的研究」です。今回の論文は実臨床を担う者としては非常に興味深かったです。
周知のように膝窩筋腱は膝関節外側支持機構のひとつであり、術中に誤って切離してしまうと膝関節外側の不安定性を惹起してしまいます。
日本人は内側型OAが多いので、靭帯バランスを考えると外側不安定性増大は大きな問題になります。しかし実臨床では膝窩筋腱切離を完全に回避することは難しい印象です。
私は、膝窩筋腱を損傷しないようにいつも注意しているのですが、大腿骨側の膝窩筋腱起始部を半分ぐらい切離してしまっていることが時々あります。
この論文を拝読するまでは、大腿骨側の膝窩筋腱起始部損傷はテクニカルな問題だと思っていました。しかし、今回の論文を拝読すると、人工関節のデザインも影響するようです。
そして、 特に膝の小さな女性においては、膝窩筋腱を損傷するリスクが高いとのことでした。解剖学的特徴によって膝窩筋腱損傷のリスクがある程度決まっているようです。
今回の論文で、解剖学的に問題のある症例では膝窩筋腱損傷を併発することを知ったことは、私にとって精神的な免罪符となりました。
今まで、「あんなに注意していたのに、なぜ膝窩筋腱が切れてしまったのだろう・・・」と思っていた症例があるからです。そして、膝の小さな女性のTKAは要注意だということを学びました。