昨日の午前も人工股関節全置換術(THA)でした。
ダブルフロアを形成している典型的なOAの症例でした。
寛骨臼のリーミングの際に掘削の深さが問題になります。私は当初、3mm 丸ノミを用手的に刺入して内板までの距離を測っていました。
しかし最近では月状窩周囲の骨棘をリーミング前に切除して月状窩底(=ほぼ内板)を展開します。この操作により内板の深さを簡単に目視できるようになります。
月状窩底と周囲の海綿骨との段差が無くなるまでリーミングすることで内板近くまで掘削していることになり、多くの症例でこの深さまでリーミングすることがひとつの目安になります。
月状窩周囲の骨棘をリーミング前に切除することは簡単な操作なので、正確なリーミングを施行するためにもお勧めの方法です。
★★★ 管理人 お勧めの医学書 ★★★
初学者がTHAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です
人工股関節全置換術
臼蓋
セメントTHA -臼蓋側-
日整会誌(J. Jpn. Orthop. Assoc.)86(9)2012, 681-684
第84回日本整形外科学会学術総会 パネルディスカッション
4名の著名な股関節外科医による誌上パネルディスカッションです。
1人目は、京都市立病院の田中千晶先生です。
下記に要約します。
・ 各国のnational registryを見ると、一般的なレベルのTHAがなされた場合の成績が外観できる
・ セメントTHA・セメントレスTHAとも機種を選べば10年成績はほぼ同等であるが、摩耗と骨溶解はセメントレスTHAで顕著であり、術後早期の大腿骨骨折はセメントレスTHAに多い
・ Highly crosslinked polyethylene(HXLPE)は、人工股関節による治療戦略に革命的な変化を起こした。
・ HXLPEの摩耗抵抗性に期待して、セメントレスTHAでは脱臼予防目的で大骨頭が頻繁に使用されるようになった。しかし、大骨頭ではHXLPEの厚みは薄くならざるを得ないため、摩耗抵抗性で不安を残している
・ 脱臼は手術手技の改善によって大部分解決されるはずなので、安易に大骨頭で解決するのはカップに想定外の外力を強いるので好ましくない
・ その他の摺動面に関して・・・
Ceramic on ceramic (COC)
⇒ 破損やsqueakingという問題はあるもののきわめて魅力的な組み合わせである
Metal on metal (MOM)
⇒ 骨溶解・金属過敏症・pseudo-tumor・ALVAL(aseptic lymphocyte dominated vasculitis associated lesion)・CD-8+T細胞の減少・DNAに及ぼす影響など多くの問題があり、MOMを支持する決定的な論証はない
・ セメントレスTHAの成績は非常に向上してきているものの、総合的見地からみていまだにセメントTHAに利がある
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ほぼ一般的にコンセンサスを得ていることですが、大骨頭に関しては賛同しかねます。周知のようにセメントカップの致命的な弱点として、大骨頭の使用は剪断力によるカップのゆるみにつながるため、22.225mmの小骨頭しか選択できません。
世界的にセメントレスカップ使用の流れになっているのは、まさに大骨頭を選択できることも大きな理由のひとつです。田中先生のように優れたエキスパートであれば、テクニックで小骨頭の易脱臼性をカバーできるのでしょうが、そのレベルに到達できる整形外科医はごく少数でしょう。
ごく少数の非常に訓練されたエキスパートと同等の手術が可能になるわけですから、セメントレスTHAが隆盛を極めるのも頷けます。
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