先日、13歳の中学生が転倒して右手をついてから痛いとのことで受診しました。単純X線像では明らかな骨折を認めませんでしたが、舟状骨結節および解剖学的かぎタバコ入れ(anatomical snuff box)の軽度の腫脹・圧痛を認めました。
身体所見は、本物の舟状骨骨折ほどの腫脹ではありませんでしたが、明らかに舟状骨周囲の腫脹・圧痛があったので念のためMRIを施行したところ、舟状骨の遠位1/3がT1WIでlow intensity・Fat suppressionでhigh intensityでした。いわゆる骨挫傷(bone bruise)の所見です。
どうみても骨折線ではなかったのですが受傷後1週の時点でもまだ圧痛があったので、初診時に作成したthumb spica splintによる固定を継続しました。
受傷後2週の単純X線像で仮骨をみとめませんでしたが、受傷後4週である昨日の単純X線像で仮骨形成を認めました!身体所見では、舟状骨周囲の腫脹・圧痛はほぼ消失していましたが、実はbone bruiseではなく、骨折だったようです・・・。
う~ん、bone bruiseに対する概念を根本から覆される症例を経験してしまいました。膝関節周囲のbone bruiseなら外固定無しでどんどん荷重していきます。しかし、舟状骨のbone bruiseはなんとなく気持ち悪いので慎重な対応をしていたのですが、どうもその対応で正解だったようです・・・。
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