整形外科医のブログ

投資の成功によって30歳代で経済的自由を達成しました。 医師起業家として年商10億円企業を目指して日々奮闘中

鑑別診断

エクスキューズ目的の抗生剤投与

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先日、外来に4日前からの両膝関節部痛を主訴に60歳台の患者さんが初診されました。
身体所見は、体温37.7度で両膝関節に著明な水腫がありましたが、発赤は認めませんでした。


両膝とも関節穿刺で混濁した関節液を吸引しましたが、検鏡では結晶を認めませんでした。糖尿病等の易感染性も無いそうで、両側同時発症であることを考えると感染は否定的です。


印象としては、(やはり)結晶性関節炎もしくは何らかの膠原病なのですが、急性発症で熱発もあるため化膿性関節炎を除外することができません。


関節液の塗沫検査でも菌体は確認できませんでしたが、治療をどうするのか悩ましいところです。治療方針は、①化膿性関節炎 ②その他 で全く異なります。


①化膿性関節炎であるなら入院での抗生剤投与や関節洗浄を検討するべきですが、②その他であれば短期的には経過観察のみです。


しかし、①化膿性関節炎の可能性が低い場合でも、臨床医の心情としては「エクスキューズ」目的の抗生剤投与を実施する誘惑に駆られます。


確率的には化膿性関節炎である可能性が10%未満であっても、感染を完全否定できていない状況下では、早期に抗生剤を投与しなかった責任を問われる可能性があるからです。


外来で抗生剤の点滴を行ったり内服の抗生剤を処方しても、急性の化膿性関節炎に対しては無効です。むしろ耐性菌をつくってしまうので、中途半端な投与は患者さんのためになりません。


私は、外来での中途半端な抗生剤投与は「エクスキューズ」以外の何者でもないと思うので、化膿性関節炎では無い印象の場合には、勇気を持って(?)抗生剤を敢えて投与しません。


もちろん、抗生剤を投与しない判断をおこなった経緯は詳細にカルテに記載しますが、自分の保身目的の抗生剤投与は、患者さんのためにも極力避けたいと考えています。



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石灰沈着性頸長筋腱炎では造影CTも

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先日、開業医のアルバイト先で夜診をしていた際に30歳台後半の方が受診されました。
この方は、昨日からの急激な後頚部痛を主訴に、当日の午前に外来受診されていました。


午前中はクリニックの院長先生が診察されたようですが、あまりに急激かつ症状が激烈なので緊急の頚椎MRIを外注されました。その結果説明で再診されたのです。


午前中のCRP/WBCは0.8/7000程度で、発熱はありませんでした。頚椎MRIでは脂肪抑制画像で
C2~4の頚椎椎体前方に高輝度領域認めました。


単純X線像では明らかな石灰化を認めませんでしたが、熱発が無いことやCRP,WBCなどの炎症反応の上昇が軽度であることから急性石灰沈着性頸長筋腱炎と診断しました。


急性石灰沈着性頸長筋腱炎の鑑別診断には咽後膿瘍があります。咽後膿瘍は緊急性のある疾患で、放置すると気道閉鎖を併発することがあります。


この方に嚥下障害や嚥下時痛はなく、呼吸状態も正常でした。後で調べてみると、急性石灰沈着性頸長筋腱炎と咽後膿瘍の鑑別診断には造影CTが必要だそうです。


咽後膿瘍では、椎体前面の低吸収域の周囲に明瞭な造影効果を認めます。基本的には造影CTの画像診断で、咽後膿瘍に対するドレナージの適応を判断します。


今回、初めて急性石灰沈着性頸長筋腱炎を診ましたが、疼痛の訴えが半端ではありませんでした。一度診たら忘れられませんが、次は咽後膿瘍との鑑別診断もしっかり診たいと思います。



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自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。




                     


                  
Critical thinking脊椎外科



                        

結晶性関節炎と蜂窩織炎の鑑別方法

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昨日の午前はアルバイト先での外来でした。
立て続けに、手背の腫脹・発赤を主訴とした高齢者が受診されました。


局所所見は、いずれも手関節よりも末梢の腫脹・発赤を認めます。単純X線像では手関節内に石灰化を認める方と認めない方が居ました。


血液生化学データは、いずれもCRPが二桁でWBCは10000程度でした。このようなケースでは手背の腫脹・発赤が、蜂窩織炎なのか結晶性関節炎なのか、判断に苦しみます。


血液生化学データでは、結晶性関節炎のWBCは比較的正常範囲内に留まっているケースが多いですが、蜂窩織炎ではWBCが上昇する傾向があります。


しかし、単純にWBCが正常範囲内であれば結晶性関節炎、正常よりも多ければ蜂窩織炎と診断することは、結果があまりに違いすぎるので恐くてできません。


このような場合、私は基本に立ち返って身体所見を重視することにしています。つまり、手背や手関節全体に腫脹・発赤が広がっている場合でも、圧痛点を丹念に探すのです。


手背を中心に圧痛点が限局されない症例では、蜂窩織炎と診断します。一方、どれだけ手背が腫れて発赤していても圧痛点が手関節に限局している場合には、結晶性関節炎と診断します。


この手背から手関節部における”圧痛点”の部位や広がりを丹念に診察することで、蜂窩織炎と結晶性関節炎との鑑別診断が有る程度の精度で可能だと思っています。




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側胸部~背部痛診療のアルゴリズム

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今日の午前は外来でした。
30歳台の男性が2日前からの突然の右側胸部~背部痛を訴えて初診されました。


このような場合には、問診の段階で下記の診断を疑っています。
 ① 肋間神経痛
 ② 帯状疱疹
 ③ 肋骨骨折


①は転移性脊椎腫瘍の除外診断のため胸椎単純X線像でpedicle signの有無を確認しています。②は皮膚を見ると分かりますが、発症後5日ぐらいしないと皮膚症状が出ないので注意が必要です


③は普通に身体所見と単純X線像での骨折の有無を確認しています。①~③のうちで外傷が無いケースでは①の肋間神経痛が多い印象です。この場合、リリカが著効することが多いです。


したがって、このような側胸部から背部痛の方にはリリカ75mg(高齢の方には25mg)から処方開始するのですが、リリカをそれほど増量しなくても疼痛コントロールができる場合が多く、治療としては結構ラクな印象を抱いています。


尚、左側胸部~背部痛の場合には循環器系の疾患である可能性もあるので、おかしな雰囲気を感じれば内科に紹介する方が無難だと思います。




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 一般的で使用頻度の高い、鎮痛薬・睡眠剤・感冒薬・胃薬・止痢薬・去痰薬・便秘薬等の薬剤が、全13章にわたって系統立てて書かれています。それぞれの章の最初に、薬剤の分類図が記載されています。各系統間の薬剤の使い分けも平易な文章で書かれており実践的な書籍です。


                      

 症状と患者背景にあわせた頻用薬の使い分け―経験とエビデンスに基づく適切な処方





姉妹本に『類似薬の使い分け』があります。こちらは全15章からなり、降圧剤、抗不整脈薬、狭心症治療薬、脂質異常症治療薬、糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療薬、鎮咳薬、皮膚科疾患治療薬、抗菌薬などが1章ずつ割り当てられています。


                       


       類似薬の使い分け―症状に合った薬の選び方とその根拠がわかる



関節リウマチの鑑別診断

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関節リウマチの外来診療でよくみかける鑑別診断として、
リウマチ性多発筋痛症RS3PE症候群、ウイルス感染に伴う関節炎、回帰性リウマチなどがあります。


これらは
日本リウマチ学会のHPに詳述されています。
2011年のACRで、鑑別診断のリストをつくるべきではないか?との質問があったようですが、鑑別診断は地域差が大きいので各国・地域でそれぞれリスト化して欲しい、と委員が回答したそうです。


これだけ鑑別診断する必要があるとげっそりしますが、コレ実は初心者向けだそうです。
京都府立医科大学整形外科の小田講師とお話しさせていただきましたが、エキスパートになると診ただけで関節リウマチなのか、そうでないのかは分かるそうです。


そのような経験的な引き出しが無い医師は、これで勉強してねという意味合いだそうです。
そういう意味では
ACR/EULARの新分類基準も、遵守しているとかなり診断速度が遅くなるので、自分の経験に従って診療に臨んでいるとのことでした。


そういえば、初診時に新分類基準で5点にもかかわらず、明らかに関節リウマチの印象の患者さんがいました。点数が足りないから4週間経過観察して6点になってからMTX投与を開始しました。これでは、window of opportunityを半分ぐらい無駄にしていますね・・・。
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