非定型抗酸菌症って厄介ですね。
この厄介な感染症を併発している関節リウマチの治療は困難を極めます。
先日、他院から既往歴に非定型抗酸菌症のある関節リウマチ患者さんの診療依頼がありました。現状はステロイドしか投与していないようで、ほぼ寝たきり状態とのことでした。
ヤバそうなニオイがプンプンします。そして現在の主治医はリウマチ医ではないようです。既往歴に非定型抗酸菌症があるというだけで、それに対する精査は施行されていません。
私もホンモノの非定型抗酸菌症の関節リウマチ患者さんは経験が無かったので、リウマチ専門医(注:私も専門医資格アリ、苦笑)に治療方針について尋ねてみました。
MAC抗体陽性で非定型抗酸菌症が確定的な患者さんに関しては、感染が増悪するので csDMARD、bDMARDとも投与不可です。
一方、MAC抗体陰性の場合は、胸部CTをフォローしながら bDMARDを半量くらい投与して関節リウマチのコントロールを行うそうです。
なるほど、場末病院でやるには少々ハードルが高そう。まぁ、そうは言っても患者さんがあまりに悲惨な状況であれば検討せざるを得ません。あぁ、プレッシャーだな...。
関節リウマチ
先日、生物学的製剤投与中の患者さんの人工股関節全置換術を施行しました。術後経過は問題無いのですが、生物学的製剤再開のタイミングで悩んでいます。
術後の生物学的製剤再開の考え方はこちらでご紹介しています。
ちなみに私は投与再開は遅めの方が望ましいと考えています。その理由は、生物学的製剤再開によって感染や創治癒不全などの合併症を併発してしまうとリカバリーが大変だから。
エラソーに上記のようなコメントをしていますが、実際の患者さんを目の前にすると悩みは深くなります。何故なら生物学的製剤を中止していると関節リウマチが再燃するからです。
術後 2週間もすると、両手のこわばりや関節痛がチラホラ出てきます。血液生化学検査でも、じわりと炎症所見が亢進始めます...。
毎日創部を観察していますが、膝と異なり股関節は表面が大丈夫だから感染の心配無し! とは言えません。THAで感染するとエライことになります。
このため主治医的には生物学的製剤再開には二の足を踏みます。しかし、炎症所見亢進は本当に関節リウマチの再燃なのか? という疑心暗鬼が募ります...。
臨床的には明らかに関節リウマチの再燃なのですが、炎症所見亢進は気持ち悪いものです。手術手技も難しいですが、術後管理も悩み深いのが関節リウマチですね。
関節リウマチ患者さんの手術って、プレッシャーかかりますよね...。術中に何が起こるのか分からないのが関節リウマチ手術のコワイところです。
さて、愚痴を言っても始まりませんが、関節外科医の目線での関節リウマチ手術のコツを考えてみたいと思います。まず関節リウマチの特徴は骨脆弱性です。
特に骨端の脆弱性はヤバいですね。単純X線像で「骨がほとんど溶けてる!」という症例はもちろんのこと、一見するとフツーにみえる患者さんでもかなり脆弱です。
このため、関節外科医が注意するべき点は、可能なかぎり軟骨下骨を温存するだと思います。関節外科における関節リウマチの2大手術は、人工関節と関節固定術です。
両者ともピットフォールは同じです。唯一(?)強度を保っている軟骨下骨を破壊してしまうと、リカバリー不能な状態に陥ります。
このため、人工股関節全置換術では表面的なリーミングに留めることがポイントです。イメージとしては、ガリっとひと掻きする程度。
一方、関節固定では軟骨除去さえ必要ありません。何故なら関節固定術が必要なほどコントロール不良な関節リウマチ患者さんでは、もともと関節軟骨がほぼ無いからです。
例えば足関節固定術では、足関節をオープンにせずに足底から髄内釘を挿入するだけで関節固定術が完了します。関節リウマチでは何もしなくても関節が強直します。
髄内釘を挿入することで、関節が強直する期間を短縮する意味合いですね。下手に足関節内をトリミングすると軟骨下骨が破壊されてエライことになるのでご注意を!
先日、関節リウマチ患者さんの人工股関節全置換術がありました。RA患者さんの手術はイヤなものですが、特に人工関節手術では気を遣います...。
関節リウマチの診療ガイドラインでは、MTXは継続投与、生物学的製剤は 2~6週間前から休薬すると記載されています。
休薬期間の 2~6週間前は、生物学的製剤の半減期がおおよその目安となっています。このため、各薬剤で半減期をそれぞれ調べる必要があります。
術前休薬に関しては半減期が目安ですが、生物学的製剤の再開時期はいつ頃が良いのでしょうか? こちらに関してはあまり明記されていません。
診療ガイドラインに明記してしまうと、生物学的製剤再開によって重篤な合併症を併発した場合にガイドライン作成委員に火の粉が飛びそうですね(苦笑)。
このため皆がこの話題を避けているのかもしれません。今回の症例では膠原病内科医師の具体的指示がありましたが、このような症例は少数派だと思います。
ちなみに私は投与再開は遅めの方が望ましいと考えています。その理由は、生物学的製剤再開によって感染や創治癒不全などの合併症を併発してしまうとリカバリーが大変だから。
一方、関節リウマチが再燃しても対応可能です。重篤になることもほとんどありません。感染すると重大な悪影響が顕在化しますが、再燃であれば何とでもコントロール可能。
このように単純化すれば、関節リウマチの患者さんでは術後合併症が併発しないことを完全に見極めてから、生物学的製剤を再開することが望ましいと考えています。
先日、いつもお世話になっている某基幹病院から超高齢者の関節リウマチ患者さんが紹介されてきました。お歳が 90歳を超えているためより近くにある私の所に紹介されたのです。
超高齢者にもかかわらず関節リウマチは高疾患活動性であり、コントロールに難渋されていることが診療情報提供書に記載されていました。
実力は折り紙付きのリウマチ医なので、本当にやっかいな病状なのでしょう。一応、整形外科医として両手と頚椎の単純X線像を撮像したところ目が点になりました。
Ranawat値がヒト桁ミリも無い、高度な垂直亜脱臼があるではないですか! 単純X線像をみるだけで、軸椎が延髄に突き刺さっていることが容易に分かります...。
超高齢者とは言え未だに高疾患活動性なので、少しでも手綱を緩めると垂直亜脱臼はさらに増悪する可能性が高いです。
垂直亜脱臼の増悪も抑制しつつ、超高齢者の関節リウマチ疾患活動性を合併症を併発させないように治療していく自信は到底ありません。
脊椎外科医師、呼吸器内科医師、肝胆膵消化器内科医師も居ない状況で、なんちゃってリウマチ医の私が診るにはあまりにハードルが高い症例です。
いつもお世話になっている医師なのでかなり迷いましたが、やはり自分の能力の限界をわきまえて、お受けすることが難しい旨の返信をしました。
リウマチ医と言っても完璧ではありません。特に上位頚椎の不安定性に関してはときどき整形外科医がチェックした方が良いのでしょう。
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