先日、膝蓋骨下極骨折がありました。下極といっても、それなりのサイズ感のある骨片です。まぁ、フツーの鋼線締結法でもいける範囲と判断しました。
しかし、透析患者さんだけに一抹の不安があります。それなら、どんな骨折にでも対応できる「ひまわり法」をやってみよう。これが、全ての元凶でした...。
ご存知のように、ひまわり法は粉砕した膝蓋骨骨折であってもかなり強固な固定を獲得できます。それなら全例ひまわり法で良いのではないのか?まさに素人の浅はかな考えでした。
ひまわり法のパンフレットには、通常の鋼線締結法にもピンとケーブルを使用している画像があります。何の疑問も無くリングピンの感覚で、ピンとケーブルを使用しました。
ところがピン穴をケーブルが全然滑らないのです!手技書には200Nに締め上げて膝を何度か屈伸させると150Nになるので、これを繰り返して骨片間に圧を加えるとあります。
ところが、何度やってもケーブルはたわんだまま...。というかピンの穴の部分でスタックして全く動かないのです。当然骨折部は屈伸毎にパカパカ開きます(苦笑)。
全く話にならないので、専用のケーブルから通常の軟鋼線に変更して事なきを得ました。しかし、こんなに固定性を得られないのであれば、鋼線締結法の方がよほどシンプルです。
今回得た教訓は、ひまわり法のピンやケーブルは、ひまわり法以外では決して用いてはいけない、でした。あのカタログに載っている鋼線締結法の画像は削除するべきでしょう。
ひまわり法のデバイスの問題点は以下の通りです。おそらく、私の感じた欠点は全国の多くの医師から寄せられているはずですが...。
- ピン穴とケーブル径に遊びが少ない
- ケーブルは撚糸なので鋭角に圧を加えることに不適当
ピン穴とケーブル径の遊びがほぼ無いため、ケーブルを鋭角した状態で、少しでも軟部組織が介在にすると全く滑りません。
このため、物理的に従来の鋼線締結法のような使用法は不可能です。ひまわり法のデバイスは、ひまわり法でしか使用するべきではないでしょう。
最後は少し批判的な表現になりましたが、ひまわり法自体は素晴らしい術式だと思います。粉砕骨折では選択肢のひとつだと思います。
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