高尿酸血症の治療で調べる機会がありました。
尿酸値がコントロールされている症例でも、痛風結節が残存していることは多いです。
周知のように痛風結節は、尿酸塩結晶と肉芽組織から形成されています。一度組織に沈着した尿酸塩はなかなか消退しません。
しかも、整形外科的には痛風結節が自壊すると結構厄介な状況になります。自壊部が潰瘍化すると感染を併発して難治性となります。
腱周囲にできることも多く、本当に厄介な存在です。そして本日のお題ですが、痛風結節は高尿酸血症の治療を続けていると治癒するのでしょうか?
日常的に多数の高尿酸血症患者さんを診ていますが、あまり痛風結節には注意を払っていません...。高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインを紐解くと回答がありました!
長期間にわたって尿酸値を5.0mg/dL以下にしていると、徐々に痛風結節は縮小していくようです。なるほど、それなら高尿酸血症の治療のし甲斐があるというものですね!
高尿酸血症
Medical Tribuneに興味深い記事がありました。
高尿酸血症の診療で直面する3つの問題 です。以下に要約しました。
問題①:病型分類は必要か
高尿酸血症には、尿酸排泄低下型、尿酸産生過剰型、混合型の3つの病型が存在します。病型分類の目的は、高尿酸血症の病態に即した治療を行うことです。
従来、副作用対策の面から病型に応じた薬剤選択が重要だとされてきました。しかし、新しい薬剤の有効・安全性は病型に左右されないとする臨床報告があります。
フェブキソスタット、トピロキソスタットなどの新しい尿酸生成抑制薬を使用する場合は、病型分類は必ずしも必要でなく、むしろ、薬剤選択の上では腎機能のチェックが重要です。
腎機能の低下した患者には、アロプリノールや尿酸排泄促進薬は避け、フェブキソスタット、トピロキソスタットなどの新しい尿酸生成抑制薬を優先すべきだそうです。
問題②:無症候性高尿酸血症に積極的に介入するべきか
米国リウマチ学会(ACR)や欧州リウマチ学会(EULAR)のガイドラインでは、高尿酸血症の治療対象は痛風に限定されており、無症候性高尿酸血症は明示していません。
無症候性高尿酸血症への介入の是非が議論されるようになったのは、高尿酸血症は痛風の原因となるだけでなく、高血圧、腎臓病、心血管疾患などを合併しやすいからです。
まだ議論の余地はありますが、無症候性高尿酸血症でも腎障害の進展予防の点から、あるいは痛風の発症予防の点から、薬物介入の意義がある可能性があります。
ポイント③:尿酸はどこまで下げてよいのか
最近の研究では、血清尿酸値と腎機能や心血管危険因子との関係はUカーブあるいはJカーブであることが示され、血清尿酸値は低過ぎることも問題である可能性があります。
低過ぎる血清尿酸値はパーキンソン病、認知症などの神経変性性疾患に関連する可能性も指摘されており、疫学研究では血清尿酸値が高いほどこれらの疾患の発症率は低いです。
このようなことから、痛風が重症で厳格な尿酸管理を目指す場合でも、血清尿酸値3mg/dL以下にはしない方がよい可能性が高いです。
一般的で使用頻度の高い、鎮痛薬・睡眠剤・感冒薬・胃薬・止痢薬・去痰薬・便秘薬等の薬剤が、全13章にわたって系統立てて書かれています。それぞれの章の最初に、薬剤の分類図が記載されています。各系統間の薬剤の使い分けも平易な文章で書かれており実践的な書籍です。
姉妹本に『類似薬の使い分け』があります。こちらは全15章からなり、降圧剤、抗不整脈薬、狭心症治療薬、脂質異常症治療薬、糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療薬、鎮咳薬、皮膚科疾患治療薬、抗菌薬などが1章ずつ割り当てられています。
痛風なのかその他の炎症性疾患なのかの診断が難しいケースにときどき遭遇します。痛風発作の際には尿酸値が低下していることがあるため、尿酸値も参考にしかなりません。
そのような際にエコーを用いて関節内を観察すると、痛風か否かの診断が可能なことが多いです。痛風発作の際には、関節内に尿酸ナトリウム塩結晶が沈着します。
無エコー像の硝子軟骨の深層に軟骨下骨皮質が高エコー線状像として観察され、硝子軟骨表層に沈着した尿酸ナトリウム塩結晶も高エコー線状像として観察されます。
硝子軟骨を挟んで深層に軟骨下骨皮質・表層に沈着した尿酸ナトリウム塩結晶がそれぞれ高エコー線状像を形成する所見をdouble contour signと言います(下図の矢印)。

( 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 瀬戸洋平先生の リウマチ科外来における関節超音波検査の有用性 から抜粋 )
double contour signは、尿酸ナトリウム塩結晶が沈着する痛風発作に特異的な所見です。そして、痛風の診断で有用なだけではなく、高尿酸血症の治療効果の判定にも有用です。
関節内の尿酸ナトリウム塩結晶は、血清尿酸値を6mg/dl以下に抑えることで徐々に消失します。血清尿酸値では結晶消失を直接確認できませんが、エコーを用いることで観察可能です。
経時的に関節内尿酸ナトリウム塩結晶沈着を示すdouble contour signを観察することにより、安定期における高尿酸血症の治療効果の判定にも有用なのです。
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初学者が関節リウマチの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です
関節リウマチ治療実践バイブル
Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
高尿酸血症はCKDのリスク因子に です。
従来、高尿酸血症と高血圧,メタボリックシンドロームには密接な関連が観察されていたが、最近、慢性腎臓病(CKD)との関連が注目されつつある。
琉球大学の井関邦敏氏は疫学研究から、高尿酸血症はCKDのリスク因子の1つであり高尿酸血症の治療は生活習慣の改善に加えて尿酸降下薬が推奨されることを報告した。
井関氏らは、血清尿酸値が高いほど腎機能の悪化や末期腎不全発症の割合が多いことを、またメタボリックシンドロームを有する者はCKD発症率が高いことが報告している。
尿酸値の増加がeGFR低下の独立したリスク因子であった。これらの結果を基に同氏らはCKD診療ガイドライン2012の重症度分類を日本人用に改変してガイドラインを作成した。
高尿酸血症の治療は、痛風合併例では尿酸降下薬の使用量を腎機能に応じて減量して投与し、痛風非合併例は尿酸降下薬を使用する前にリスクとベネフィットを勘案する。
同氏は「CKDは心血管障害のリスクであり、高尿酸血症はCKDのリスク因子の1つである。痛風・高尿酸血症の治療には生活習慣の改善に加えて尿酸降下薬が推奨される。
新規高尿酸血症治療薬の登場により中等度の腎機能低下例でも腎機能の改善が期待できるようになったが、前向き介入研究が必要である」とまとめた。
先日、尿酸には酸化ストレスに対する保護作用があり、認知症を予防する効果が見込めるという報告がありましたが、今回は尿酸はCKDのリスク因子であり、尿酸=悪玉 という報告です。
暴飲暴食の生活習慣を送っている多くの高尿酸血症患者さんを外来で治療している身としては、高尿酸血症の治療は”臭い物に蓋をする”的な印象を抱いていました。
つまり、いくらこちらががんばって高尿酸血症の治療をして痛風発作を予防しても、暴飲暴食による肝機能障害や耐糖能低下は避けることはできないという半ば投げやりな心境です。
しかし、高尿酸血症の治療がCKDの予防につながるのなら、高尿酸血症の治療のやりがいも少し出てくるような気がします。
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一般的で使用頻度の高い、鎮痛薬・睡眠剤・感冒薬・胃薬・止痢薬・去痰薬・便秘薬等の薬剤が、全13章にわたって系統立てて書かれています。それぞれの章の最初に、薬剤の分類図が記載されています。各系統間の薬剤の使い分けも平易な文章で書かれており実践的な書籍です。
症状と患者背景にあわせた頻用薬の使い分け―経験とエビデンスに基づく適切な処方
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類似薬の使い分け―症状に合った薬の選び方とその根拠がわかる
Medical Tribune 2014年3月6日号に興味深い記事がありました。
「ソフトドリンクは高尿酸血症の危険因子」です。以下、Medical Tribuneからの転載です。
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高尿酸血症・痛風は日々の生活習慣が大きく関係する疾患で,特に飲酒や肥満が主な危険因子であることは広く知られている。近年,果糖の摂取と尿酸値上昇との関連性が指摘されている。聖路加国際病院クリニック予防医療センター管理栄養士の小倉祐紀子氏は「ソフトドリンクの摂取は高尿酸血症の危険因子である」と報告した。
果糖は肝臓の酵素(フルクトキナーゼ)によって代謝され,フルクトース-1-リン酸になるが,その際,ATPからリン酸を奪うためATPの分解が進み,その結果最終代謝産物として尿酸値が上昇する。一般にソフトドリンクに含まれる純粋な果汁は少ないが,果糖ブドウ糖液糖という異性化液糖(ブドウ糖の5割以上を果糖に変えたブドウ糖と果糖の混合液糖)として含まれている。
例えば,ある果実色飲料500mLには果糖が32〜57.6g含まれており,一方果物ではりんご1個(250g)当たり20.2g,みかん1個(100g)当たり4.2gである。ソフトドリンクの摂取は,異性化液糖として大量の果糖を一気に摂取することとなり,尿酸値上昇につながると考えられる。
小倉氏らは,同院の人間ドック受診者のうち,高血圧,脂質異常症,糖代謝異常,高尿酸血症・痛風の薬剤加療中の者を除く3万2,170人〔男性1万4,027人(平均年齢49.5±11.6歳),女性1万8,143人(同48.7±10.8歳)〕を対象として,血液生化学・尿検査値および生活習慣問診から得られた結果を基に,ソフトドリンク摂取量と尿酸値との関係について横断研究を行った。
スポーツ飲料を含むジュース,果汁・野菜ジュース・炭酸飲料の合計を1日のソフトドリンク摂取量として計算した。ソフトドリンク摂取量と尿酸値の間には正の相関が認められ,重回帰分析では性(男性),年齢,体重,血清クレアチニン,尿pH,アルコール摂取量に加えソフトドリンク摂取量が尿酸値上昇に関わる独立した危険因子であることが示された。
同氏は「今回の研究から,果糖を含むソフトドリンクは高尿酸血症に関する独立した危険因子であることが示された」と結論付けた。
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外来で高尿酸血症の患者さんの治療を行う機会は非常に多いですが、現実的な食事療法の柱はカロリー制限および飲酒制限だと考えていました。
高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは「1日のプリン体摂取量が400mgを超えないように高プリン食を控える」とありますが、現実的には実行困難なことが多いからです。
しかし、カロリー制限および飲酒制限だけではなく、果糖を含むソフトドリンクも制限するべきであることは勉強になりました。明日からの外来で活用したいと思います。
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