関節リウマチの患者さんで、慢性腎不全のために血液透析を施行している方がときどき居ます。このような基礎疾患を持っている患者さんの治療は、なかなか厄介です。
慢性腎不全ではMTX禁忌のため、コントロール不良例では生物学的製剤を投与せざるを得ません。しかし、易感染性がベースにあるため、生物学的製剤の選択には細心の注意が必要です。
このようなハイリスク症例では、私はオレンシア(ABA)もしくはアクテムラ(TCZ)を選択しています。やはり、TNF製剤よりも感染に対して安心感があるからです。
運よくこれらの薬剤が奏功すればOKですが、疾患活動性のコントロールが十分できない症例もあります。先日もTCZ → ABAでもコントロール不良な症例がありました。
う~ん、どうしよう。。。いろいろ考えていると、名古屋大学整形外科の石黒教授の講演で、ABAにタクロリムスをオンすると良いとおっしゃられていたのを思い出しました。
藁にも縋る思いでプログラフを追加処方したところ、徐々にですがSDAI、DAS28-ESRとも低下してきました! 患者さんも体が楽になってきたと喜んでいます。
今までプログラフは高価な割には効果が少ない(ダジャレではありません)と思っていましたが、ABA投与例においては検討に値するかもしれないと感じました。
ABA
最近の整形外科領域における製薬会社主催の薬品説明会の定番は、関節リウマチの生物学的製剤とPTH製剤などの骨粗鬆症治療薬だと思います。
両者とも非常に高価な薬品群なので、製薬会社も販売に力を入れています。さて、定番化した薬品説明会ですが、とある製薬会社主催の関節リウマチの講演会に参加してきました。
テーマはその製薬会社が販売する生物学的製剤に関する学術研究の結果でしたが、情報交換会の挨拶で、とある現役を退かれた関節リウマチ界の重鎮の先生のひとことが印象的でした。
いわく、「生物学的製剤の第一選択薬になるためには、薬価の引き下げが最も重要である」とのことです。「薬価が引き下がれば自然に第一選択薬となる可能性が高い」という持論です。
この言葉は、まさに至言だと思います。2014年9月現在、日本では7種類の生物学的製剤が使用可能です。それぞれ特徴はありますが、効果はほぼ横並びであることが判明しつつあります。
こうなってくると、医師側からは①安全性 ②継続率 ③バイオフリーの可能性、患者側からは①薬価 ②投与方法 が薬剤を選択する上での重要なポイントとなってくると思います。
しかし、最終的には患者さんに治療を開始するか否かの決定権があるので、やはり”薬価”が生物学的製剤の第一選択薬として最も大きな要素となる可能性があるのです。
そういう観点からTCZやABAが生物学的製剤の第一選択薬となる可能性があります。両剤ともTNF阻害薬の2番手的な扱いですが、EULAR 2013では両剤とも第一選択薬に加えられました。
薬価で第一選択薬を決定するとは何事か!と関節リウマチのお偉方から批判を受けそうですが、実際に費用負担する患者さんに対して”武士は食わねど高楊枝”は通用しないと思います。
★★★ 管理人 お勧めの医学書 ★★★
初学者が関節リウマチの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です
関節リウマチ治療実践バイブル
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