第34回日本骨代謝学会学術集会において、4年ぶりの改訂となる6学会共同(1)の顎骨壊死ポジションペーパー2016が公表されました。私の感じた主なポイントは下記3点です。


  • 骨粗鬆症患者に骨吸収抑制薬を予防的に休薬してもARONJ(2)発生率の低下は認められず、休薬による発生予防との関連は不明である。

  • 発生頻度から見ると休薬による骨密度低下や骨折発生増加の方が問題であり、休薬のリスクよりも継続投与の利益の方が優る。つまり、歯科治療前の休薬を支持する根拠はない。

  • 医科歯科連携不足がARONJの問題を大きくしているのかもしれない。歯科医師は患者を通じて医師の治療方針の変更を要請するような行為は慎むべきである。


治療が難しいARONJを実際に担当する歯科医師の気持ちは理解できます。しかし、ARONJを重視しすぎるあまり、患者さん全体のリスク・ベネフィット感覚を失ってはいけないと思います。


また、日常診療では「歯科で骨粗鬆症の薬を止めるように言われた」とおっしゃる患者さんが多いです。患者さんを伝書鳩に使うのではなく、診療情報提供書で依頼するべきでしょう。



  1. 日本骨代謝学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯周病学会、日本歯科放射線学会、日本口腔外科学会、日本臨床口腔病理学会
  2. 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死〔Anti-resorptive agent-related Osteonecrosis of the Jaw(ONJ);ARONJ〕




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