以前、血液透析施行例での関節リウマチ治療という記事を書きました。この中で、血液透析施行例でも使用可能な薬剤について検討しました。当時の私は血液透析と血漿交換を混同していたのですが、その後コメントで生物学的製剤の透析性について指摘を受けました。
そこで、文献を渉猟した結果、血液透析中であっても生物学的製剤はほぼ通常通りの使用方法で問題無いことが判明しました。もちろん、血液透析症例ではMTXが禁忌のため、使用できる生物学的製剤は制限されます。
具体的には埼玉医科大学リウマチ膠原病内科の秋山雄次先生の論文に詳述されています。
維持透析中の関節リウマチ患者における抗リウマチ薬の使用法
485-492, 日本臨床免疫学会会誌 Vol.34 No. 6, 2011
要約すると、下記の如くとなります。
・ DMARDsではSASP、TACを中心に治療を進める
・ 生物学的製剤では①TCZ ②ETN、ADA、ABA の順番で推奨される
・ 生物学的製剤の導入に際しては、通常例以上に感染のスクリーニングおよびモニタリングを徹底する
・ AAアミロイドーシス合併RAは予後が悪いので、積極的に生物学的製剤導入を検討する
関節リウマチで血液透析施行例の方は、AAアミロイドーシスのために腎不全に移行した症例も多いようです。したがって感染のスクリーニングおよびモニタリングを徹底しながら、生物学的製剤の導入を推奨されています。
血液透析施行例での関節リウマチ治療を行う際には、秋山先生の論文を一読することをお勧めします。
★★★ 管理人 お勧めの医学書 ★★★
初学者が関節リウマチの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です
関節リウマチ治療実践バイブル
DMARDs
血液透析施行例での関節リウマチ治療 その1 のつづきです。
まず、MTX投与不可なので代わりとなるDMARDsを検討しました。透析例でも使用可能なDMARDsとしては、アザルフィジン(SASP)やアラバ(LEF)があります。LEFは間質性肺炎が怖いので、まずはSASPを投与開始してみました。DIを参照したところ、透析例でも減量の必要性は無いとのことです。
次に生物学的製剤のスイッチングについて検討しました。レミケード(INF)、アクテムラ(TCZ)、オレンシア(ABA)、シンポニー(GLM)などの投与間隔の長い製剤は、週3日の透析毎に除去されてしまうため効果の持続を期待できません。投与間隔が最も短い製剤はETN 25mgです。
この方にはETNが一次無効であったので再開するのもどうかと思いましたが、ETNは中和抗体が無いので試してみる価値はあるかなと思いました。
そして現在、この方が最も困っているのは、左膝関節と両肘関節痛です。単純X線像ではそれぞれ高度の関節破壊を認めます。立位もままならない状態なのでADLの改善には人工膝関節全置換術(TKA)が望ましいと考えました。
血液透析施行例での関節リウマチ治療 その3 につづく
※ 2013.4.25追記
生物学的製剤に透析性はありません。したがって、通常通りの使用方法が可能です(MTXが使用できないため、選択できる薬剤が限られます)。尚、感染のスクリーニングおよびモニタリングには十分に留意するべきです。詳しくはこちらをご覧ください
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