昨日、大腿骨頚部骨折の方が搬入されました。いつものごとく、当日手術を目指して術前検査を施行したところ肺機能が異常に悪かったのです。ルームエアでの動脈血ガス分析は、PaO2 37mmHg、PaCO2 43mmHg、pH 7.5とやや呼吸性アルカローシスでした。
また、心エコーでは肺高血圧を疑う所見(肺動脈弁および三尖弁での逆流血圧の異常高値)を認めました。総合的に判断して肺血栓塞栓症(PTE)を併発していると判断しました。
2日前から呼吸苦と胸痛が出現し、1日前に転倒して大腿骨頚部骨折を受傷したとのことです。PTEを発症してしんどくなったために転倒して、大腿骨頚部骨折を受傷されたようです。肺炎を発症してしんどいから転倒して、大腿骨近位部骨折を受傷することは多いですが、今回はPTEが原因となったようです。
さすがに麻酔をかけると生命の危険性が高まるので、手術は延期して内科入院でPTEの治療を施行していただくことになりました。
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PTE
静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その4 のつづきです。
肺血栓塞栓症の可能性が高い場合は直接診断を確定できる造影CT、肺動脈造影、肺シンチグラフィを施行することが勧められます。

肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版)
血液生化学検査
特異的な所見はありません。
胸部X線像
7割に心拡大や右肺動脈下行枝の拡張が見られます。
また、1/3には肺野の透過性亢進が認められます。
心電図
VTEに特異的な心電図所見は存在しません。
動脈血ガス分析
低酸素血症・低二酸化炭素血症・呼吸性アルカローシスが特徴的所見です。
肺シンチグラフィ(換気,血流)
換気シンチグラフィで異常所見がない部位に、血流シンチグラフィで楔形の欠損像を示します。
静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その6 につづく
静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その3 のつづきです。
PTE発生時の症状の症状は下記のごとくです。
呼吸困難,胸痛が主要症状であり,頻呼吸,頻脈も高頻度に認められます。
呼吸困難は最も高頻度に認められ、他に説明ができない突然の呼吸困難で危険因子がある場合には、急性肺血栓塞栓症を鑑別診断に挙げなくてはなりません。
失神も重要な症候で中枢肺動脈閉塞による重症例に出現します。急性血栓肺塞栓症は、失神の鑑別疾患として忘れてはなりません。
咳嗽・血痰も少なからず認められ、動悸・喘鳴・冷汗・不安感が認められることもあります。
特徴的発症状況としては安静解除直後の最初の歩行時、排便・排尿時、体位変換時があります。
ショックで発症することもあり、この場合には低血圧を認めることもあります。
肺高血圧症に基づく所見としては、右心不全を来たすと頸静脈の怒張を認めます。
私は過去に3回のPTEの経験がありますが、うち1名の方は安静解除直後の最初の歩行時でした。運悪く胸郭形成術後で片肺しかない方だったので、心肺蘇生に全く反応しませんでした。
静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その5 につづきます。
師長さんから人工関節置換術後の肺塞栓症について、病棟勉強会を開いてほしいという要望がありました。せっかくまとめたので詳述します。
まず、人工関節全置換術後の合併症として、
① 深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)が発生して、この塞栓子(血栓)が肺にとぶことで
② 肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism: PTE)が発生します。
肺血栓塞栓症+深部静脈血栓症は、連続した病態であるという考え方から、
これらを合わせて静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)と呼びます。
※ 肺血栓塞栓症+深部静脈血栓症=静脈血栓塞栓症
リスクレベルは下記のごとくです。
THAやTKA術後は、自動的に高リスク群となります。
VTEの発生率です。
致死性PTEの発生率が意外なほど高いのが印象的です。
日米の人種差なのでしょうか?
第7回ACCPガイドラインより改変
静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その2 につづく
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