整形外科医のブログ

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S-ROM-A

大腿骨転子部骨折後のTHA

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以前施行した人工股関節全置換術(THA)のまとめをしました。
手術手技のピットフォールを備忘録として記載してみました。


この方はまだ60歳台ですが大腿骨転子部骨折を受傷されたため、近医でガンマネイルを用いた骨接合術を施行されました。


通常、大腿骨転子部骨折は大腿骨頚部骨折と異なり、大腿骨頭壊死症を併発することは稀です。しかしtype C2 の大腿骨頭壊死症を併発してしまい、疼痛のため歩行困難となりました。


大腿骨転子部骨折で大腿骨頭壊死症を併発する原因としては、梨状窩から髄内釘を挿入してしまったため大腿骨頭の栄養動脈を損傷してしまうことが挙げられます。


しかし最近の髄内釘は大腿骨大転子頂部から挿入するタイプがほとんどです。この方も単純X線像上で、ガンマネイルの刺入部位に関して全く問題ありませんでした。


大腿骨転子部骨折術後の大腿骨頭壊死症に対してTHAを施行する場合、大腿骨頚部前捻角が健側比でかなり減捻していることが多いです。


これは牽引手術台で手術を施行する際に患肢を内旋位で牽引することが原因です。また、骨折の転位で大腿骨近位の形状が変形するため、通常ステムでは対応できないことが多いです。


セメントレスTHAの場合、このような症例では旧Depuy社のS-ROM-Aの独断場です。手術の際の注意点は下記のごとくです。


  1. 大腿骨頚部が硬化していることが多く、リーミングが困難なことがある
  2. 大転子部が変形しているため、リーミングの際に術中骨折を併発する可能性がある
  3. 遠位スクリュー刺入部の髄内が硬化しており、リーミングが困難なことがある
  4. 外傷後なので軟部組織の弾性が低下している


寛骨臼側の変形は少ないですが、手術の難易度はTHAの中では高い方だと思います。もしこのような症例に遭遇した場合には、できるだけ股関節専門医に任せる方が無難でしょう。




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大腿骨転子部骨折後のFHR

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昨日の大腿骨転子部骨折後偽関節のつづきです。診断に関しては、ショートネイルが入っている状態でも、意外とCTを撮影することで偽関節の診断が可能なことをお伝えしました。


次に問題になるのは手術ですが、基本的には通常の人工骨頭置換術やTHAよりもかなり難しいです。revision THAほどではないですが、それに近い感覚かもしれません。


まず、ネイルの抜釘ですが、刺入部の表面は骨に覆われていて分かりにくいことが多いです。この場合には、まずラグスクリュー刺入部を展開してドライバーを挿入します。


ドライバーの方向からネイル刺入部位を推定します。そして、その部分をk-wireでドリリングして位置を探ります。k-wire先端に金属が当たる部位を切除するとネイル刺入部を展開できます。


一般的にネイルは大転子頂点から挿入されているので、大転子が菲薄化して強度が弱くなっている可能性があります。このため、術中操作では細心の注意を払う必要があります。


基本的に、セメントレスステムが前提の場合にはS-ROM-Aでの対応が望ましいと思いますが、バックアップでセメントステムも準備しておくとよいでしょう。


術後Xp



ただ、セメントステムはどのような症例でも対応可能ですが、脱臼肢位の確認を充分にできないことから一発勝負になりがちなので、できるだけ避けたいところです。




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                        股関節学



THA: 小転子直上では過前捻は少ない

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昨日の午前の手術は、人工股関節全置換術(THA)でした。脚長差が約4cmもあるため、大腿骨短縮骨切術併用のTHAも考えましたが、結局は通常の術式での対応としました。


この症例は更に大腿骨頚部前捻角が約50度もある大腿骨頚部過前捻の症例でした。通常、大腿骨頚部過前捻がある場合にはS-ROM-Aを選択するケースが多いと思います。


しかし、今回の症例では、①大腿骨頚部が短縮している ②高位脱臼のため脚短縮しており引き降ろしが必要 だったので、大腿骨頚部骨切をかなり低位にする必要がありました。


小転子よりも10mm~15mm上で大腿骨頚部前捻角が大きくても、小転子直上レベルではほぼ打ち消されている症例が多いです。もちろん、これは術前CTで判断できます。


今回の症例でも小転子よりも10mm~15mm上では約50度でしたが、小転子レベル直上レベルでは20度程度でした。このため、S-ROM-Aは不要との判断で、Accolade 2を選択しました。


実際に術野を確認しましたが、CTの結果通り大腿骨頚部前捻角は20度ぐらいしかなく、Accolade 2でも全く問題はありませんでした。


このように大腿骨頚部過前捻症例であっても頚部骨切が低位の場合には過前捻ではないことが多く、術前計画における頚部骨切ラインでの大腿骨頚部前捻角の計測が重要となります。




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THA: 易脱臼性では寛骨臼骨棘に注意

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今日の午前の手術も、人工股関節全置換術(THA)でした。
臼蓋形成不全の程度が強く、大腿骨頚部過前捻だったのでS-ROM-Aを使用しました。


S-ROM-Aはほぼどのような症例でも対応できる優れた機種ですが、それでも寛骨臼周囲の骨棘が大きいとインピンジして脱臼することがあります。


今日の方はトライアルの段階では、さほど易脱臼性が無かったのですが、インプラントを挿入後にトライアルすると、後方への脱臼傾向を認めました。


指を寛骨臼と大腿骨に間に挿入して後方脱臼肢位にすると、明らかにインピンジしていました・・・。おそらく、ステム挿入時の微妙な前捻角の誤差がインピンジにつながったのでしょう。


しかし、インプラントは挿入した後のなので、いくらS-ROM-Aといえども簡単には前捻角の再調整はできません。そこで寛骨臼前方の大きな骨棘を切除することにしました。


指で確認しながら、約15mm×20mm×10mm程度の大きな寛骨臼前方骨棘を切除したところ、著明に後方への易脱臼性が消失しました。やはり骨棘によるインピンジが原因だったようです。


THAの易脱臼性の有無は僅かな差で決まります。したがって、術中に易脱臼性を見つけたら、入念にどこに易脱臼性の原因があるのかを見つけ出す必要があります。


術後に持ち越すと後々やっかいなことになることがあるので、術中にできるだけがんばって原因究明およびその対策を行っておくべきでしょう。



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THA: 大腿骨頚部が後捻の症例

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今日の午前の手術は、人工股関節全置換術(THA)でした。
この方は大腿骨頚部前捻角が”後捻”しており、非常に苦労しました。


大腿骨近位の調整がchangable neckの方がより細かく対応しやすいため、今回はS-ROM-Aではなくてkinectivでの対応としました。


しかし、kinectivでは前捻角の調整に限界があるので、寛骨臼側のカップ設置前に大腿骨側の処置を行いました。そして大腿骨に前捻角10度程度でステムが設置できることを確認してからカップを設置しました。


もちろん、カップの前方開角は大き目(30度程度)で設置しています。このような工夫で安定した股関節となりましたが、もともと後捻している大腿骨にラスピングするためカルカー内側の皮質骨が早い段階から露出しました。


頚部骨切り部には海綿骨がまだ残っていましたがカルカー内側部は完全に皮質骨のみになってしまったため、予定よりも2サイズダウンのステムとなりました。無理をして予定サイズのステム挿入にこだわると骨折を併発した可能性があります。


大腿骨後捻の症例は普段あまり経験しないですが、やはりS-ROM-Aで対応する方がどのような状況にも対応できるため、よりお勧めかもしれません。




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                                    人工股関節全置換術



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