先日、高齢者の大腿骨転子部骨折に対して基本的に当日手術を施行していることを書いたところ、患者さんの病態把握に困ったことは無いかというコメントがあったので、私が注意している点をまとめてみました。
まず、どんな状態であっても基本的には手術を施行する前提なのですが、抜管不能な重度肺炎や心筋梗塞・脳梗塞の超急性期症例については、さすがに手術は行いません。
私が重視している術前検査のチェックポイントは、①心機能 ②高度弁膜狭窄症の有無 ③腎機能 ④重度肺炎の有無 です。
① 心機能
心エコーをルーチン化して、駆出率(EF)を参考にしています。
おおよそ60%以上あると安心ですが、ときどき40%ぐらいの方がいるので注意が必要です。
② 高度弁膜狭窄症の有無
心エコーをルーチン化しています。 高度弁膜狭窄症が存在すると補液に細心の注意が必要です。
③ 腎機能の把握
手術まで時間が無いので、eGFRを参考にして補液量や抗生剤の投与量を調整しています。
④ 抜管不能な重度肺炎の有無
肺炎は、大腿骨近位部骨折の主な受傷原因のひとつなので、常に注意が必要です。
胸部X線像、血液生化学で確認しています。
疑わしい場合には胸部CT施行の上、内科医に相談です。
要は、通常の術前検査(血液生化学・胸部X線像・ECG・動脈血ガス分析)に加えて、心エコーをルーチン化しているだけです。幸い心エコーをスムーズに施行してもらえる体制なので、病態把握に時間を取られることはあまりありません。
eGFR
THA予定の患者さんで腎機能障害をきたしている方が何名かいます。
推算糸球体濾過量(eGFR)が、25-35mL/min/1.73㎡程度でした。
慢性腎臓病(CKD)の病気分類ではstage 4の”高度低下”となるようです。
http://www.kyowa-kirin.co.jp/ckd/check/check.html
術後抗生剤の用量調整は行いますが、NSAIDsを投与するべきか悩みます。
術後に鎮痛剤無しはかなりかわいそうですし、ストレス性消化管潰瘍併発の危険性もあります。
DVT対策で抗凝固療法を行う(eGFR>30mL/min./1.73㎡の方のみ)ので、持続硬膜外チューブ留置も気持ち悪いです。
そこで、少しでも腎臓の負担が少ないNSAIDsはどれかを調べてみました。
ロキソニン → 肝代謝、腎排泄
セレコックス → 肝代謝、肝排泄
ハイペン → 肝代謝、肝排泄
添付文章上は、セレコックスもしくはハイペンが、まだましなようです。
ハイペンは腎機能障害例でも通常量での投与可と記載があったので、今回はハイペンにしようと思います。
2012.5.29 追記
腎臓内科医さまに、NSAIDs間の腎機能障害に差は無いとのご指摘をいただきました。
これを受けてNSAIDsの使用は止めて、アセトアミノフェンでの対応にしようと思います。
御教示いただき、誠にありがとうございました。
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